≪NEW≫ ~外国人雇用の現場から~Vol.23 政府の外国人受入方針が発表されました
政府の外国人受入方針が発表されました
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政府の方向性が示されました
高市政権から「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」が発表されました(令和8年1月23日)。今後、政府が外国人受入にどんなスタンスで臨もうとしているのか、気になる方も多いのではないでしょうか。
全体で98ページあるので、さらっと読むには多いのですが、外国人受入の「現状と問題点」、「現在の取組」、「今後の課題」が、項目ごとに整理されていて、とても読みやすい内容です。
目指すべき共生社会の実現のためには、外国人に「秩序」を守ってもらわなければいけないと強く述べてあり、理想論だけではなく非常に現実的な方向性が示されていると思います。短期間でこれをまとめた関係者の本気度を感じます。
内容の大きな構成は、「国民の安全・安心のための取組」と「外国人が日本社会に円滑に適応するための取組」の二部構成となっております。外国人の在留資格の問題や税金問題、オーバーツーリズム、不正な土地取得、日本語教育など、幅広い項目をカバーしています。
もちろん、これで全ての課題がカバーされているとは思いませんが、現時点での政府の優先順位と大きな方向性が分かります。外国人支援に関わる人には必読の内容です。
<参考> 外国人の受入れ・秩序ある共生のための 総合的対応策
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国民の安全・安心のための取組
第一部の「国民の安全・安心のための取組」ですが、簡単にまとめると、外国人は日本のルールをしっかり守りなさいという内容です。
そんなの当たり前じゃないかと思うかもしれませんが、裏を返すと、そのくらい日本のルールを守らない外国人が多いということです。日本では、不法滞在者は7万人を超えていますし、不法就労で捕まる外国人も年間1万5千人くらいいます。
<参考>~外国人雇用の現場から~Vol.5 「不法就労ってどんなこと?」
外国人のルールというと在留資格制度(ビザ)が基本となりますが、今回は、具体的に「経営・管理」、「技術・人文知識・国際業務」、「留学」、「永住者」の在留資格について、厳しい言及がありました。いくつか確認してみたいと思います。
「経営・管理」については、既に昨年10月から許可基準が大幅に引き上げられています。これで、外国人が日本で会社を経営するのは一気に難しくなりました。怪しげな民泊会社や自動車関連会社が無くなるのはよいのですが、個人的には全国に点在するカレー屋さんも激減するのではないかと心配しています。
<参考>出入国在留管理庁:在留資格「経営・管理」に係る上陸基準省令等の改正について
「技術・人文知識・国際業務(技人国)」については、やはり人数が一気に増えてきたから、この辺りで一度しっかりと整えようということなのでしょう。いまや技人国の外国人は45万人を超えて、まもなく技能実習生を超えそうな勢いです。
「技人国」は外国人が高度な仕事に従事するための在留資格ですが、この在留資格で単純労働をしている外国人が多いのではないか、ということです。
ただ、そもそも、働いてもいい「高度な仕事」と働いてはいけない「高度ではない仕事」の境目が曖昧なのです。ルールを守りたくても、企業も外国人もよく分からないという現場の声も多いのではないでしょうか。
<参考>出入国在留管理庁:許可・不許可事例
もちろん、明らかに悪意を持って単純労働をさせている会社があるのも事実です。こういった悪意のある会社はしっかりと取り締まって欲しいと思います。
「留学」については、国の認識と現状にズレがあるように感じます。週28時間を超えるアルバイト(オーバーワーク)の問題としていますが、実際はオーバーワークをする留学生はほとんどいなくなりました。
理由は、「オーバーワークをしてはいけない」という意識が、日本語学校やアルバイト先、留学生本人にも浸透してきたからだと思います。その他にも、入管と労働局の情報連携が進み、オーバーワークがばれやすくなったというのも大きな理由かと思います。
それでも、いまだにオーバーワークをしている留学生はいます。これはもう確信犯ですね。厳しく罰していいと思います。技人国の問題は拡大傾向なのに対して、留学生の問題は縮小傾向にあると思います。
いずれにしても、「外国人にルールを守ってもらう」という流れが鮮明になりました。
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外国人が日本に適応するための取組
第二部の「外国人が日本社会に適応するための取組」ですが、日本語教育と外国人のライフステージごとの支援について書かれています。
日本語教育については、「労働者」、「生活者」、「子供」に対するそれぞれの日本語教育の課題や問題点がまとめられており、とても分かりやすいです。
特に子供への日本語教育は、現状の問題がひしひしと伝わってきました。今でさえ外国人児童への日本語教育は十分ではないのに、これからさらに増えていくことが見込まれています。
令和9年から始まる「プレスクール(仮称)」など、子供への日本語教育は抜本的な強化が図られるようなので、おおいに期待したいです。
また、外国人のライフステージごとの支援については、「乳幼児期」、「学齢期」、「青壮年期」、「高齢期」ごとに、問題点や課題が整理されています。これも分かりやすいです。出産一時金や脱退一時金、生活保護制度などの社会保障の在り方や問題点が列挙されています。
若い外国人労働者もいつかは老人になります。外国人のライフサイクルに合わせた支援を、長期的に考えることの重要性を改めて気づかせてくれました。
増え続ける外国人を、長期的に日本社会は包括できるのか。立ち止まって考える必要があります。
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全体を通した感想
外国人受入で様々な意見が飛び交う中で、今回、この新しい総合的対応策が示されたのは、非常にタイミングが良かったです。感情論に流れがちな外国人受入政策を、理性的な議論の場に引き戻せたと思います。
外国人に対して、「日本のルールを守らない外国人との共生なんて実現しない。日本に滞在させない。」という強い意志表示があり、「秩序」という視点の重要性が明確に打ち出されています。
これは決して排外主義ではなく、むしろ外国人との共生社会の実現を本気で考えているからこその方向性だと思います。
「秩序は社会の土台、多様性は社会の力であり、この両者を両立させることが、真の秩序ある共生社会の道であると考えられる」という有識者の意見に強く賛成です。
今回の総合的対応策がきっかけとなり、バランスの良い施策が検討・実行されていくことを期待します。
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キャリアバンク株式会社
取締役 海外事業部 部長
水田充彦
行政書士/社会保険労務士/日本語教師 有資格者。
外国人の採用・定着支援や自治体の多文化共生支援を専門とする。日本全国で外国人採用関連のセミナーを300回以上実施し、地域の外国人雇用の現状に精通。アジア圏を中心に頻繁に海外へ訪問しており、現地の送出機関や教育機関と豊富なネットワークを持つ。