~外国人雇用の現場から~Vol.21 全国セミナー行脚で感じたこと
全国セミナー行脚で感じたこと
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2025年も12月となり、残りわずかとなりました。今年も北海道から九州まで、日本全国でセミナー講師やシンポジウムでの登壇の機会をたくさん頂きました。
色んな地域で多くの企業や自治体の方と話をして、「外国人受入の現状と課題」を肌で感じることができ、私自身も大いに刺激や学びがありました。
今回のコラムでは、今年1年間のセミナー全国行脚で感じたことを、いくつかお話したいと思います。
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全国でインドネシア人が増えてきた
全国色んな地域で、「インドネシア人が急激に増えた」という声を聞きました。一気に外国人労働者の主役がインドネシアに変わってきた雰囲気があります。
ただ、統計上は、現在、日本で働く外国人で一番多いのはベトナムで、次に中国、フィリピン、ネパールと続いて、インドネシアは5番目です。そこまで高い順位ではありません。

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なぜ、全国でインドネシア人がここまで増えているように感じるのでしょうか。
それは、地方に在住する外国人は特定技能と技能実習が中心であり、インドネシア人はこの分野で急増しているからです。
特定技能と技能実習では、インドネシアはベトナムに次いで既に2番目となっており、あと数年で1番になりそうな勢いです。ベトナムからインドネシアへの切り替えが急激に進んでいます。
また、インドネシア人の多くはイスラム教徒です。彼らを受け入れる際には、食事やお祈りなど、宗教的な配慮が求められます。インドネシア人の増加に伴い、各地域や企業で、異文化理解の必要性が増してきています。
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国籍ごとに様々な動きが出てきた
その他、ミャンマー人も、特定技能と技能実習、留学の分野で急増しています。ミャンマー政府が出国を規制しており、日本に入国するときに隣国のタイを経由するなど、人材送出し国としては不安定さが拭えません。いつ落ち着くのでしょうか。
また、ネパール人は、日本語学校への留学分野で相変わらず積極的に増えています。日本語学校では、最近はパキスタンやバングラデシュ、スリランカの留学生も増えてきました。
以前は外国人労働者と言えば技能実習生、国籍は中国人もしくはベトナム人という感じでしたが、このように、コロナ禍以降は、在留資格や国籍ごとに様々な動きが出てきたなと感じます。
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外国人が地方に定着してくれない
今年は外国人の定着をテーマにしたセミナー依頼が数多くありました。「せっかく採用した外国人が3年も経たずに辞めてしまう」と多くの企業が嘆いていました。
なぜ、いきなり外国人の定着が課題となってきたのでしょうか。
コロナ禍前は、外国人労働者といえば「転職の出来ない技能実習生」が中心でした。しかし、2027年3月に技能実習制度は廃止となり、代わりに「転籍の出来る育成就労制度」が新設される予定です。
また、最近全国で増えている外国人労働者は、2019年に新設された特定技能の外国人です。特定技能も転職をすることが出来ます。
その為、日本全国で、特に地方を中心に、一気に外国人の職場定着が課題となってきました。
ただ、外国人の声を聞いていると、いずれは東京や大阪に行きたいという気持ちが出てしまうのは、ある程度は仕方ないのかなという気もします。
もちろん、職場定着率を上げるために取り組めることはたくさんあります。外国人の気持ちも理解した上で、地域に定着してもらうためには、そもそもどんな人を採用すべきか、どのような支援をしていくべきかをしっかりと考えていく必要があります。
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外国人との共生が大きな課題に
2025年7月の参院選以降、全国で外国人排斥の声が大きくなってきました。
キャリアバンクでは、いくつかの自治体の外国人に関する相談窓口を運営しておりますが、この窓口でも色んな意見を頂きました。外国人受入反対のデモも各地で起こっております。
なぜ、急に風向きが変わったのか。今後もこの流れは続くのでしょうか。
以前のコラムでも書きましたが、急に全国で外国人排斥の声が大きくなった理由は、「外国人の急激な増加に対して、日本人の多文化共生の意識が追い付いていない」、これが本質的な原因だと思います。
<参考コラム>~外国人雇用の現場から~Vol.17 『外国人排斥の声をどう受け止めるか』
外国人受入のスピードを早めることは簡単ですが、多文化共生の意識を醸成していくには時間がかかります。外国人排斥の声は、外国人受入と多文化共生を両輪で進めることの大切さを気づかせてくれました。
この声をしっかりと受け止め、外国人との目指すべき共生社会を改めて考えていくことが大切です。
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地域特有の課題を解決することは難しい
その他にも、全国各地で様々な変化や課題がありました。
ある地域では技人国の不法就労が多いなとか、悪いブローカーが暗躍しているな、とか、留学生のオーバーワークが常態化しているな、など地域ごとに特有の課題を目にすることがありました。
また、最近の外国人との共生に関するトラブルは、技能実習や特定技能の分野ではなく、経営管理や技能、技人国などの在留資格分野で多く発生しているように感じます。
全国共通の課題であれば、全体的な制度を見直すなどして対策が取れます。しかし、地域特有の課題は、その地域特有の対応策が求められます。
各自治体が、しっかりと外国人受入の実態を把握し、的確な支援や対策を実施していく必要があります。
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外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に向けて
現在、政府では外国人受入の適性化を進めようとしています。2026年1月には、「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」も刷新される予定です。
入管法をはじめ、外国人受入の制度は、時代に応じて変化し続けています。
技能実習生が、ようやく日本の労働基準法の適用を受けるようになったのは、2010年です。それ以前、技能実習生は「研修生」として最低賃金ももらえない仕組みでした。
また、2015年に「技術」と「人文知識・国際業務」の在留資格が一本化され、「技術・人文知識・国際業務」となり、外国人留学生の就職の幅が広がりました。まだ10年前の話です。
外国人の受入は全体として、制度面や環境整備面など、具体的な課題解消に向けて着実に前進している、と感じます。もちろん、色々な問題は確かにありますが。
政府には、これまでの変遷や現状を踏まえた上で、厳しすぎず、緩すぎない、絶妙なバランスで外国人受入制度を定めていっていただきたいと期待します。
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キャリアバンク株式会社
取締役 海外事業部 部長
水田充彦
行政書士/社会保険労務士/日本語教師 有資格者。
外国人の採用・定着支援や自治体の多文化共生支援を専門とする。日本全国で外国人採用関連のセミナーを200回以上実施し、地域の外国人雇用の現状に精通。アジア圏を中心に50回以上の海外渡航歴があり、現地の送出機関や教育機関と豊富なネットワークを持つ。