≪NEW≫ ~外国人雇用の現場から~Vol.14 インドネシア人労働者は増え続けるのか
インドネシア人労働者は増え続けるのか
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インドネシアに出張してきました
インドネシアに出張してきました。日本ではインドネシア人労働者が急増しており、企業も自治体もインドネシアへの関心が高まっています。
以前は、日本で働く外国人は中国人が中心でしたが、2012年あたりからベトナム人が増え始め、2020年には日本で働く外国人で一番多いのはベトナム人となりました。
ただ、5年ほど前からベトナム人の採用が徐々に難しくなってきて、人手不足に困った日本企業が、ベトナムの代わりにインドネシアやミャンマーから人材を採用しようと動き出しています。
インドネシアからの採用は今のところ順調です。しかし、今後もインドネシアから日本に働きに来てくれるのか、それともベトナムのようにいきなり採用が難しくなるのか、人手不足にあえぐ地方の企業にとって、大きな不安要素です。

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インドネシアはどんなところ?
みなさんはインドネシアにどのようなイメージを持っていますか? インドネシアは赤道直下にあり、東京から飛行機で8時間ほどかかります。ベトナムやフィリピンよりもさらに2時間くらいフライト時間がかかり、東南アジアの中では日本から遠い国となります。
そして世界でも4番目に人口が多く、約2億8千万人います。そのうち約1,100万人が暮らす首都のジャカルタでは超高層ビルが立ち並んでおり、とても近代的な地域もあります。ただ、車の渋滞はひどいし、道路の舗装も行き届いていないし、ちょっと買い物に出かけるのも大変です。生活のインフラが整っているとは決して言えません。
気候は熱帯性気候で、四季はなく、雨季か乾季に大きく分かれます。今回も最高気温が35℃で最低気温が25℃くらいでしたが、一年中こんな感じのようです。最近では夏の東京の方が暑いので、驚くほどの気温ではないです。
食べ物はナシゴレンやミーゴレンなどが有名で、今回もたくさん食べました。庶民的な味でとても美味しいです。ただ、全体的に辛く、揚げた料理が多いので、辛さや油に弱い人は注意が必要です。
宗教はイスラム教の人が9割です。お祈りの時間(1日5回)には周辺のモスクからアザーンが街中に響き渡り、多くの女性がヒジャブという布を頭に被っており、いたるところでイスラム教を感じる場面があります。この雰囲気は日本人にとって違和感があるかもしれません。
若者の間では日本のアニメが流行っていて、古くは「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」、最近では「NARUTO」や「ONE PIECE」などが人気のようです。音楽は残念ながらK-POPに人気で負けているようですが、アニメのお陰で日本のイメージが随分良いなと感じます。
その他にも驚くことが沢山あります。例えば運転免許がお金で買えたり(非合法ですが)、スクーターに4人乗りしている人がいたり、交通違反で警察に捕まっても賄賂で解決できるとか、法治国家とは思えないカオスな部分も色濃く残っています。それでも日本と違って、若者が多く、みんな明るくニコニコして、成長のエネルギーを感じる国です。

これからもインドネシア人は日本に来てくれるのか
ベトナムやインドネシアなどの人材の送出し国が、どうやって働く国を選ぶのかは、以前のコラム(~外国人雇用の現場から~Vol.7 外国人労働者の送出し国を選ぶポイントは?)で書きました。 給与の高さだけではなく、就労開始までのハードルや文化の近さなど、総合的な理由があります。
はたして、これからもインドネシア人は日本に来てくれるのか?あくまで個人的な見解ですが、まだまだインドネシア人は日本に来てくれそうです。少なくともこれから3年間は大丈夫だと思います。
その理由は、そもそもインドネシアは人口が多いし、アニメの影響もあって日本に対して良いイメージを持っている人が多いです。国内で日本語を勉強している人が71万人もいて、この数は世界で中国に次いで2番目です。
さらに、インドネシアとしては困ったことですが、国内で若者の就職先があまりないようです。若者の失業者がこれ以上増えないように、インドネシア政府が積極的に若者の海外就労を支援しています。今回の出張で訪問したバンドン市でも、日本語学習をするために補助金を出して、日本就労を支援しているようです。
インドネシアの送出し機関も、これからもっと多くの人数を安定的に日本に紹介出来そうだと、皆さん口をそろえて自信満々におっしゃっていました。きっと大丈夫なのでしょう。

また、イスラム教徒の受入れについて、当初は心配されていましたが、今のところ大きなトラブルはなさそうです。上手く日本の社会や会社にも馴染んでいると思います。そもそも敬虔なイスラム教徒は日本を選ばないでしょうし、日本に来ているインドネシア人はお祈りの回数やヒジャブの着用、食事なども、日本の慣習に合わせてくれる人が多いようです。
当面は、インドネシアを中心に、特定技能も育成就労も増えていくと感じました。ミャンマーも勢いがあったのですが、最近は国内の混乱の影響を受けて先行き不安定です。
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懸念があるとすれば
順調に進みそうなインドネシア人の受入れですが、あえて懸念点を挙げるとすれば、建設の求人は最近募集が難しくなってきた、という声をいくつかの送出し機関から聞きました。飲食料品製造や介護の求人では簡単に応募者を集めることが出来るけど、建設は厳しいと。実は、中国もベトナムも、人の募集が難しくなるのは建設業からでした。
また、インドネシアの送出し機関は基本的に自社で応募者を集めていますが、一部の送出し機関はブローカー(仲介業者)を使っています。ベトナムでも同じようなことがあり、10年くらい前はベトナムでも送出し機関が自社募集していましたが、今では基本的にブローカーを使わなければ応募者が集められなくなっています。
あと3年くらいは、現在と同等かそれ以上の人数が、インドネシアから日本に働きに来てくれると思います。でも、いつかは中国やベトナムと同じように、インドネシアから人材を採用するのが難しくなるのだろうなと思います。それが5年後なのか、もっと先なのか。早まらないことを願います。
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インドネシアは奥が深い
インドネシアは奥が深い、今回改めてそう感じました。複雑な歴史背景があり、数多くの島国で構成されているために、今も様々な民族や文化が混在しています。
また、イスラム教の慣習や歴史を表面的に知ることは出来ますが、イスラム教はそもそも日本人になじみがなく、数百年も地域に根付いている宗教を深く理解することは本当に難しいことだなと感じました。
今回もモスクを見学させてもらいましたが、普段は冗談ばかりの明るいキャラクターのインドネシア人が、お祈りの始めると急に真剣な表情になったり、帰りの飛行機でも隣に座った男性がふいにお祈りを始めたり、驚かされることがありました。
インドネシアに限った話ではありませんが、異文化の人を理解することはとても難しいです。日本では外国人が増えていますが、多文化共生社会を実現するためには何をするべきなのか、常に模索し続けることが必要です。労働者が足りないから海外から連れてくる、と決して安易に考えてはいけない、そんなことを改めて再認識したインドネシア出張でした。
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キャリアバンク株式会社
取締役 海外事業部 部長
水田充彦
行政書士/社会保険労務士/日本語教師 有資格者。
外国人の採用・定着支援や自治体の多文化共生支援を専門とする。日本全国で外国人採用関連のセミナーを200回以上実施し、地域の外国人雇用の現状に精通。アジア圏を中心に50回以上の海外渡航歴があり、現地の送出機関や教育機関と豊富なネットワークを持つ。