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≪NEW≫ ~外国人雇用の現場から~Vol.20 タイは外国人の受入国に変わるのか

タイは東南アジアを代表する観光国

微笑みの国、タイに行ってきました。新千歳空港から飛行機で約8時間、時間はかかりましたが、直行便は楽ですね。楽過ぎて、海外に来た実感もないまま、タイに到着しました。

バンコクの空港で人を待つ間、レストランでタイの有名料理パッタイ(焼きそば)を食べました。よく値段を把握しないまま注文しましたが、ドリンクと小さなデザートが付いて590バーツ。日本円で約2,800円。空港価格とはいえ、高いです。いきなり円安とインフレの洗礼を受けました。

空港からバンコク市街までは、高速鉄道で簡単に移動できました。タイは海外旅行客も多いので、英語が少し出来れば、交通機関もレストランも何の心配もありません。さすが、東南アジアを代表する観光都市です。

随分と以前になりますが、実は父親が仕事でタイに長期間駐在していたので、タイは私にとってなじみの深い国です。30年前はバンコク市内を象が歩いたりしていましたが、今やバンコクは巨大なビルが立ち並ぶ大都会です。その変貌ぶりに驚かされます。

タイは日本以上の外国人の受入れ国

意外かもしれませんが、タイでは多くの外国人が働いています。タイで働く外国人は400万人になるようで、日本の230万人より多いのです。

タイで働く外国人は、多くは隣接するミャンマーとラオス、カンボジアから来ているようです。実際に、今回バンコクで食事をしたレストランで働いていたのは、ミャンマー人とラオス人でした。

タイでは、建設や農業、漁業など、さまざま分野で外国人が働いています。最近はカンボジアとの国境紛争が原因で、カンボジア人が大量に帰国してしまい、タイは極度の人材不足に陥っているようです。

タイから日本に働きに来てくれるのか

「そもそもタイ自体が人手不足なら、タイから日本に働きに来てくれないんじゃないか」。そう思うかもしれませんが、ところが、日本では39,806人のタイ人が働いています(令和6年10月末 厚生労働省)。

タイ国内でも仕事はあるけど、チャンスがあれば日本に働きに行きたいという人が一定数いるのでしょう。仕事探しは、個人の好みや接してきた情報で決まることが多い、ということだと思います。

例えば、中国は日本を超える経済大国です。でも、中国人の技能実習生は、減ってはいますが、まだ日本に33,123人います。上海で働くよりも、日本で働きたい中国人もいるのです。同じように日本で働くよりも、バンコクで働きたいミャンマー人もいるのです。人それぞれです。

もちろん大きな流れとして、賃金の低いところから高いところへ移動する、人材が多いところから少ないところへ移動するという流れはあります。

今後、自国の経済が発達するにつれ、日本で働くタイ人は減っていくかもしれません。現在も、日本で技能実習生として働くタイ人は、タイ北東部の貧しい地域の出身の人が多いようです。

タイの送出し機関

今回の出張では、いくつかのタイの送出し機関と打ち合わせをしてきました。タイでは、送出し機関の数が少ないです。実質20社ほどしかないです。年間500人以上を送り出していたら、トップクラスの規模だそうです。

たしかに、日本で働くタイ人の技能実習生は13,613人、特定技能も3,840人と、インドネシアやベトナムと比較すると随分と少ないので、このくらいの送出し機関の数、規模でも十分なのでしょう。

また、タイは技能実習生が送出し機関に払う手数料が、他の国に比べて高いです。20万バーツ(約90万円)が相場のようで、ベトナムやインドネシアなどに比べても圧倒的に高いです。タイ人の技能実習生もまた、多額の借金を背負って日本に働きに来ているようです。

ただ、2027年4月から始まる育成就労では、本人からの手数料は月給2か月以内と制限されます。他の国は大した影響は受けませんが、タイの送出し機関は大きな影響を受けそうです。

余計なお世話ですが、タイの送出し機関は、育成就労制度が始まる前に、ビジネスモデルを変えていく必要があると思います。

実はタイは入管法違反が多い

2013年から、タイ人は日本にビザなしで観光に訪れることが出来るようになりました。タイ人の観光客が増え、日本との交流の機会が増えるのは、とても嬉しいことです。

ただ、この制度を悪用して、観光で来たと偽って日本に入国し、不法就労や不法滞在しているタイ人が急増しています。

入管によると、日本に不法滞在する外国人は全体で71,229人です。一番多いのはベトナム人で13,070人ですが、二番目がタイ人で10,924人です。しかもその92.9%が観光目的と称して日本に入国してきたタイ人です。(令和7年)
https://www.moj.go.jp/isa/content/001448071.pdf

日本で外国人の不法就労者も全体で14,453人のうち、一番多いのはベトナム人で6,200人ですが、二番目がタイ人で3,171人です。(令和6年)

また、入国目的に疑義ありと、日本の空港で入国拒否された外国人は、令和6年で7,879人です。一番多い国がタイで1,415人です。ちなみに2番目は中国の802人です。

先日のタイの少女の痛ましい事件もありました。タイからの観光客が減ってしまうのは残念ですが、ビザなし入国は見直した方がいいのではないでしょうか。
https://www.moj.go.jp/isa/content/001434985.pdf

送出し国を深く理解することが大切

いろいろ課題はありますが、これからも日本からタイに旅行する人はたくさんいるでしょうし、タイから日本へ観光や就職で来てくれる人もたくさんいると思います。

タイ人の多くは仏教徒だし、勤勉な国民性なので、日本の文化に適応しやすいと感じます。当社が特定技能で支援しているタイ人も、介護福祉士合格を目指して頑張っていますし、職場でもみんなに可愛がられています。これからも多くのタイ人に日本に来て欲しいものです。

その為には、先に述べたタイ人の入管法違反はしっかり規制をかけて欲しいと思います。また、報道されているように、タイ国内でも開放的な雰囲気に潜む、闇もあります。

海外旅行では、訪問する国の綺麗な面を楽しめばいいのです。ただ、その国から外国人を労働者として受け入れるとなると、それだけでは足りません。

長期的にわたり、一緒に働く仲間となり、彼らの生活を支援することになります。送出し国がどんな国なのか、国民性はどうなのか、良い面だけではなく、課題点もしっかり把握しておく必要があります。

タイ人に対して、多くの日本人は良いイメージを持っています。このイメージが反転しないように、取り締まるべきところは厳しく取り締まり、いつまでも世界中から愛される、微笑みの国であって欲しいものです。

キャリアバンク水田特定技能外国人


キャリアバンク株式会社
取締役 海外事業部 部長
水田充彦

行政書士/社会保険労務士/日本語教師 有資格者。
外国人の採用・定着支援や自治体の多文化共生支援を専門とする。日本全国で外国人採用関連のセミナーを200回以上実施し、地域の外国人雇用の現状に精通。アジア圏を中心に50回以上の海外渡航歴があり、現地の送出機関や教育機関と豊富なネットワークを持つ。